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爆発記念日によせて(前編) [社会]

「福島に住むのは危険です!一刻も早く避難してください!」

「避難してきましたよ」

「キャー!ピカがうつる!近寄らないで!」

 

 http://takedanet.com/archives/1013802442.html

 武田邦彦先生によれば今月中に日本に住めなくなる日が来るらしい。この予想が当たるか外れるかは分からないが、当たるにしろ外れるにしろ、「住めなくなる」と断言した人間が来月も日本に住み続けるなんて論理的にあり得ないので、来月には武田邦彦もその信者も日本にはいないことは間違いない。いけしゃあしゃあとさんまの番組とかに出るなよ

 そんなわけで、原発事故後に極端に危険を煽る発言が横行したが、彼らの情報源をたどると、武田邦彦やら上杉隆やらマヌケな発言をするやつらとか、怪しい商売をするやつら(クリス・バズビー)ばかりにいきあたり、そいつらの発言の整合性をしっかり観察すれば極端な危険派にはならないですむわけだが、まあ日々そんなに暇じゃなければ注意深く検証する暇もなく、騙されてしまう人もいるかも知れない。

 恐ろしい健康被害が出るという人と、そんなには出ないだろうという人、実際どちらが科学的なのか?ある場では預託実効線量がどうのLNT仮説がどうの線量率効果がどうの難しい議論がなされていて、もともと理系的素養があるかちょっとは勉強するかしないと議論に参加できない。日々忙しい人は教養を深める暇もなく、マヌケな発言者に騙されてしまうかも知れない。

 

だが、常識レベルで判定できることもある。それをこれから書いてみよう。

 

 例えば反原発の人がよく言う「同じ線量でも自然由来の放射線の方が人工放射線よりリスクが少ない」というもの。「養殖の魚より天然の方が栄養がたっぷりで美味しい」みたいなニュアンスが感じられ、エコ好きな奥様とかは騙されてしまいそうだ。だが、魚と放射線は違うのである。アルファ線はヘリウム原子核と同じ陽子と中性子2個ずつの粒子、ベータ線は電子、ガンマ線は可視光線と同じ仲間の電磁波。こういったものは魚や野菜のように、複雑な内部組織を持たない。個体ごとにみんな少しずつ違うような個性をもたない。波長であるとか運動量であるとか、限定された変数で性質はみんな一様に決まってしまい、例えば電子一個といったとき発生源が天然とか人工とか関係ない。そんなのは物理の基本であり、これが違うなら20世紀の物理学の成果が根底からくつがえされる。コペルニクスクラスの大変革がおこるような大胆な意見である。技術体系もくつがえるので、人工衛星は落ちてくるかも知れないし、ケータイは明日から使えなくなるかも知れない。

 

 だから「自然由来の方がマシ」なんて聞くと、中高の理科で平均レベルの点数を取ってた人や、科学の本を興味持ってよんだりしたことが一回でもあるような人なら「え?」って耳を疑ってしまうわけだが、もしかしたら反原発の人はそのくらいの「コペルニクスクラスの大変革」があり得ると思ってるかも知れない。あるいは、中高の理科の教科書レベルから御用学者の捏造で事実がねじ曲げられていると考えてるかも知れない。原発から利権を得ている御用学者が理科の教科書まで書き換えてるなんて常識的にはにわかには信じがたいが、この疑いは実は意外に根深く、根底的な反論が難しい。

 

 例えば、光の速度は毎秒30万km程度と科学の本に書いてある。これはマイケルソン・モーリーの実験で計測され、何度も追試され、いろんな観測事実と照合され、最早それが否定されるといろんなことが根底からくつがえされる前提的な真理のように扱われているが、我々のほとんどはマイケルソン・モーリーの実験を目撃などしてないのである。「じゃあやってみよう」と言われて目の前で展開されても、我々には何が起きたのか分からないし、機械の構造とかいくらでも疑う余地はある。計測機械の一つ一つについて一からつくるところから実験の全貌を見届けて、騙しがないかどうか完全にチェックすることは科学者でも不可能。科学に関して言えば、誰か知らない人が発見したことになっている観測やら法則やらを受け入れるしかない。つまり、権威を受け入れるところから始まるのである。疑い出せばいくらでも疑えるのである。

 

 学界でもはやゆるぎないものとされている前提的な定説でも、そこには「権威の受容」という怪しい基盤があり、そこを突けばいくらでも「捏造だ 利権だ 御用だ」と言えてしまう。理科の初歩知識でつっこめるタワゴトでも本気で信じてる人を動かすのは難しいのである。

 

 じゃあ、どうするか?御用だなんだというもはや認識論レベルの疑いの余地が入らない科学的つっこみは可能なのか?

 

 可能である。これについては長くなったので次回に続く!

 



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